創造工学研修

簡単な地球環境観測

建築・社会環境工学科 風間聡   TA 秋本嗣美

(サーバーが壊れて報告が遅くなりました.)

みなさんのレポートを公開します.高いレベルの内容になっています.

池田さん加藤さん鎌田さん佐藤さん瀬尾さん渡邉さん

この経験が様々な場面で役に立ちます.将来が楽しみです.

以下は実習の
履歴です.


第八

前回の結果を見て,方法と判別の考察をしました.

物理量を調べるのに「定性的」と「定量的」があることを説明しました.工学的には定量性が求められます.
分解能と軌道について説明をしました.

宿題であった個別に知りたい環境物理量として,
植生活性度,耕地面積,紅葉前線,交通量,海水温,建蔽率,屋外の人の密度
が挙がりました.今までの知識とは関係なしに言ってもらいましたが,前半6つは実績があります.

植生活性度はNDVIなどをつかってバイオマス(m3)などを調べることができます.炭素の収量を調べることも可能です.これは耕地面積も同じで,古くは小麦や大豆の収量を予測し,先物取引に使われたりしました.
交通量はLANDSATでは無理です.もっと細かいセンサーが必要ですが,実際に道路上の車の量を調べたりすることがあります.交通量は時間の概念が入りますので,台/sとかm3/sとかで表現されます.
海水温(K)はもっとも古典的で有用な情報です.地球環境問題の代表的な指標です.漁業や気象予報に使われたりします.
建蔽率(%)は光学センサーでは無理で,マイクロ波(レーダー)を使います.

以上の環境量を抽出するのも今までやった方法と同様です.物理量ともっとも関係のある波長帯の輝度値と物理量を比較してからバイナリーツリー法で同定し,その後で世界へ拡大できます.

最後の屋外の人の密度は,細かい分解能の必要性から困難であり,例を見たことがありません.
うまくやれれば新しいアルゴリズムを提案できるかもしれません.

ここまでが基礎編です.ここまでやれれば十分です.一線でやっていることとあまり変わりません.
なので,これで創造工学演習は終わりです.

但し,これより先をやりたい人は,発展編として今後も継続して受講することができます.
12月24日,1月15日,1月21日に追加の演習をすることができます.詳しくはレポートの説明の後.


レポートについて

1月21日までにメール他で提出.A4六頁以下.

”今までの作業工程+自分が示した環境物理量推定の具体的な方法を示す+考察と感想”
の構成で書く.なお,不明な点はいつでも受け付ける.

リモートセンシングについては,検索ソフトで探せるが,

日本リモートセンシング学会の学会誌
日本写真測量学会の学会誌「写真測量とリモートセンシング」
境リモートセンシング誌

に具体的な方法が示されている.図書館でも見れる.



発展編について.

発展編をやっても成績がよくなることはありませんが,興味があるなら挑戦してみてください.

今回やった土地利用区分を全球(世界)でやってみたい,とか今回提案した環境量を求めてみたいとか,
があれば,残りの演習でやってみましょう.

材料を準備する必要があるので,事前に連絡ください.12月24日は在室していますが,それ以外はアポをとること.



第七

前回の続きです.今回は教師つき判別と教師なし判別を学びました.
現地に行って状態を把握してから行う判別を教師つきと言います.
今までやってきたやつです.

それとは別に現地に行かなくてもヒストグラフから特長をつかんで判別するのが教師なしです.

また,初めて植生指標(NDVI: Normalized Diffference Vegetation Index)を使いました.
植生地域を特定するのに有用です.バイナリーツリー法は順序が大事なので,水域を除いた後,植生を判定することが大事です.

NDVIの画像です.NDVI=(近赤外-赤色)/(近赤外+赤色)で求めます.(NDVI=(B4-B3)/(B4+B3))

これを使うと植生の判断が容易です.




大部分を占める緑地帯から抜き出してみました.また,今までの判定の順序を変えてみました.
すると順序を変えただけで随分区分が変わることがわかります.



都市と緑地の区分が良好です.拡大してみてください.かなりのもんです.

問題点としては,田と森林がうまくいってないようです.
他の波長を使う必要があります.なお,宅地と建物を区分するのは困難と判断し,統一しました.

次回は,こうした区分図を用いて,個々が知りたい環境量,例えば緑地面積とか高温部分とかを2つほど考えてください.リモートセンシングでできるかどうか話あいましょう.





第六
秋本さんが指導してくれました.

前回の続きです.9つの土地利用を区分をしました.
閾値の同定を丁寧にして,全ての土地利用区分を行いました.
バイナリーツリー法の精査を行いました.

今回得られたツリーは以下の通り.


これに従って区分した図が以下の通り.




前回と比べるとどうでしょうか?だいぶ良くなりました.

大きな問題点は,土と判断された地域が広すぎることです.また,公園の地域も広がっています.
道路は指摘されていません.もう少し考えて見る必要があるようです.

4回と5回の経験を生かして,特徴的な地域から抽出することを心がけましょう.
つまり,ツリーの順序も重要なことです.

次回は,順序を考え直すことと,教師つき判定法と教師なし判定法について説明します.



第六回
8つの土地利用を区分するための方法と特長を勉強しました.
植生指標等の波長の組み合わせを学びました.バイナリーツリー法を学びました.

五回のグラフを見ながら作成したバイナリーツリー法による区分が以下の通りです.





水域と緑地は結構綺麗に区分できています.しかし,都市とかの人工物が今ひとつです.

見たところBAND 5の区分に問題があります.近赤外で緑地を区分したつもりですが,BAND 5は短赤外で近赤外ではありません.しかも,グラフをみるといくつか混在しています.近赤外はBAND 4なのでこれを使うとだいぶ改善されます.そこの区分をB4<140としてみると下のようになります.




砂浜がよく出ています.緑地とそれ以外が良く出ています.
しかし,それ以外の区分が出来ていません.

こうして分ける値を閾値(いきち,しきいち)といいます.今回はかなり適当に決めましたが,次回はじっくりとこの値を見極めましょう.なお,BAND 4(<140)を使った後の区分も再考しましょう.




第五回

LANDSAT-TM画像を見て,先週の残りの作業をしました.


左からband5,6,7となります.真っ暗ですが,赤外の波長帯に入ってきているからです.
白いほど温度が高くなります.

先週と併せた結果が以下の通りになります.

第三回の結果と比べてみて如何ですか? 800nm付近の近赤外帯では,やはり山(森林)や田んぼのような緑地帯の値が大きくなっています.建物や土のような箇所は赤の波長帯でやや大きくなっています.水域は全般に低い値になっていますが,長い波長帯で顕著です.

上の図に赤外の波長帯を加えてのが下の図になります.


赤外は対象物の温度と関係があります.建物の温度は低く,砂浜や住宅地の温度が高くなっています.
短赤外の波長帯からの減少率(勾配)を見ると,水域は増加していますが,建物や砂浜は減少しています.

こうした対象物体の性格をみてやれば衛星画像から対象物を区分した地図を作成することができます.


第四回

LANDSAT-TM画像を見て,現地観測と同様の作業をしました.

具体的には,土地利用毎の輝度値を調べました.選んだ土地利用は,


です.band1からband4まで調べました.



左からバンド1,2,3,4となります.

見え方が全然違います.目標は第3回に作成した分光反射率のグラフと同様のものの作成です.




第三回

屋外で分光反射計を使って色々な地表物の反射率を計測しました.
今日のお手伝いはPDの川越さんです.

13時に川内で集合.中山のうどう公園で観測.天候:曇り,気温20度.



対象物は,草,道路,家,森,水,土,畑です.白板との比較から反射率を計算します.

その後,ファミレスでデータをエクセルに打ち込みました.PCの調子が悪く,何度もフリーズしました.
このせいで時間がかかりました.



実測結果は上のようになります.経験的にわかっているものと大差ないので,良好なデータといえます.

次回は15時から研究室でこのデータを考察して,衛星データで同様のことをしてみましょう.



第二回

先週の復習をしました.

画素がデータを持つことを理解しました.
各バンドの輝度値がどんなものを表しているか,調べました.地図を使って対象物を確認しました.

バンド 輝度値域 対象物
1 0-100 市街地でない
1 0-70 森林かも...
1 70-90 市街地でない
2 50-60 都市部
3 0-30 陸より海.山地
3 80-100 市街地や道路
4 20-50 水辺
4 150-200 山や森林
5 0-50 水と一部の山地
5 0-30 水辺
5 30-80 森林
6 35-40 自然なもの
6 50-60 市街地.


 
左が皆がやったband2(60-70)の都市の範囲です.
右は私がやったband2(45-70)の範囲です.

右の方が都市の部分をよくカバーしています.但し,都市でない部分,例えば砂浜などを班別しています.
もう少し細かくみると色々な違いが見えてきます.

こうして色々ば場所を特定していくと土地利用区分図を作成することができます.


次回は10月29日13時から屋外で観測します.川内待ち合わせ.晴れると良いですね.

各波長帯の物理特性を現地で確認しましょう.


第一回は
10月15日月曜 16時20分より 建築・社会環境工学科2階奥 水環境システム学研究室集合

顔あわせを行いました.今回は,
池田さん(建),加藤君(建),鎌田君(機知),佐藤君(電情),瀬尾君(建),渡邉君(建)の6名です.

広域の環境計測の有効な方法と波長の性質について話をしました.
演習として仙台市周辺のLANDSAT画像を解析することにしました.

光の性質の説明をしました.
 光の三原色RGB.マイクロ波〜赤外〜赤橙黄緑青藍紫〜紫外
デジタル画像の概説をしました.
 1bit〜8bits=1byte=256階調で強弱を表現
 白はR255G255B255で,黒はR0G0B0で表現.

仙台近郊のTM画像を見てみました.以下の画像はナチュラル画像と呼ばれるものです.
植物の緑色を強調した絵になっています.
Rにバンド3,Gにバンド4,Bにバンド2を割り付けています.



バンド4は近赤外の波長帯で葉緑素に強く反射します.



次回は,10月22日15時から行うことにしました.


東北大学が受信している人工衛星データはここで見ることができます.

http://asiadb.cneas.tohoku.ac.jp/

JAIDASは最も蓄積されたデータで仙台もカバーしています.
画像はch2とch4が中心で最近は5チャンネルがカバーされています.
色々画像を見て想像,考察してみてください.






実際の衛星画像を見てみて,身の回り環境の状態を調べてみよう.

人工衛星の仕組み,光の性質,環境の状態,都市計画への利用を学びます.


実際の活動

作業1:パソコンでNOAA衛星の画像を見れるようにします.

作業2:それぞれの画像の持つ意味を考察します.
作業3:色々な季節の画像を比べます.
作業4:現地では実際どのようになっているのかを見てみます.
作業5:こうした観測を生かす方法を考えます.

ここまで出来れば単位習得.リモートセンシングの基本はOK.
以下はかなりつっこんだ問題です.余力のある人は挑戦してください.

作業6:分光反射計*を用いて衛星画像との違いを考察.
(* 地上リモートセンシング計)

作業7:衛星画像を組み合わせて環境評価に挑戦.

これから先は実際の研究の入口に踏み込みます.発展編:できるかな?

作業8:他の衛星画像を使って他の国の環境を評価.
作業9:各国間の環境を比較,考察.



進め方

分量は問いませんが,作業を日記調に綴ってください.レポートの書き方はこちらで指導します.PCは自分のものを利用しても構いませんし,無ければ研究室のものを使ってください.

最終的な成果はHP上に名前入りで公開します.

不明な点は随時,研究室の学生または私に相談してください.

E-mailでの連絡先はこちら.

過去の創造工学研修成果
 平成12年度
 平成15年度



その他

リモートセンシングに関する基本事項(旧宇宙開発事業団)

NASAのホームページ

研究室のホームページ

風間聡のホームページ(創造工学研修の成果にリンク)