メアリーとトム

子供頃,トマトとトマトジュースが嫌いだった.それでも小学生の高学年になるとトマトは食べれるようになった.が,トマトジュースは嫌いだった.自分から飲むことなんてなかった.大学に入って一人暮らしを始めると,偏った食事に野菜不足が気になりだす.コンビニが乱立し始めた頃で,その冷蔵庫には野菜ジュースがあった.当時の野菜ジュースの味は,トマトジュースとほぼ同じであり,あのドロッとした感じが癖になりだす.そうして,トマトジュースを飲むようになった.

トマトジュースを使ったカクテルはたくさんある.その中でお気に入りがレッドアイ.トマトジュースをビールで割ったこのカクテルは,疲れたときに最高だ.あの”くはー”というビールの刺激が今日はちょっと,というときに良い.だけど,あるときこうも思う.ビールだけでも十分うまい.刺激を楽しむのがビールなんだから,それにトマトジュースなんて邪道だ!しかも,割高ではないか! 結局貧乏人の血が騒ぎ,レッドアイは却下になる.しかし,タイで生活しているときに,しんどいなぁと感じたときにレッドアイを飲んだ.タイ人にはひどく評判悪かった.

トマトジュース系のカクテルでは,ブラッディメアリーがダントツに人気がある.機内でもよく頼んでいる人を見かける.ANAではソースを入れているようだ.バーによってレシピが極端に違う.マティーニなんかよりずーと多様だ.基本はスミルノフ(これは実はアメリカ製;スミノフという表記が多いが,XCの選手はスミルノフと表記されているぞ)とデルモンテのトマトジュースに氷か?それにセロリスティックを入れるのが多いような...僕が好むやり方は,ウクライナの剣ことペルツォフカにデルモンテのトマトジュースを泡立つ位シェイクして,レモンを少々いれる.

なんでもブラッディメアリーにはスノッブがいて,マティーニに並ぶとも劣らぬ人気があるという.ウオツカではなく,ジンやラムを入れる輩もいるらしい.ジンの場合はブラッディ−トムというらしい.メアリーの由来は諸説紛々で興味が尽きない.じゃあ,ということになってトマトジュースに焼酎もしくは日本酒を割ってブラッディ−ソウと名づけて売り出すか....名前が悪いって? すみませんねぇ.


グレンフィディック

最も有名なモルトウイスキーだ.あの緑色した三角のボトルが特徴的で鹿の絵もいい.ハイランドモルトの滑らかさと軽い感じが,非常に飲みやすい.免税店でもシーバス,ジョニ黒とならんで用意されている.僕のモルトウイスキーの第一歩はこの酒だった.

一時期,モルトウイスキーに凝った.理由は,漫画のレモンハートに触発されたからで,ヤマヤで色んなモルトウイスキーを買っては飲んだ.そして,モルト通になりたいと思った.しかし,ある本屋で見つけたモルト大全によって,それは学生の身分でたどり着けるようなものではないことがわかった.とにかく種類が多すぎるのだ.それに手に入らない方が多い.当時はバブル後期で,世界中の酒が日本に集まっていたにも関わらず,モルトの大半はマニアックで特注なものだった.国内で手にいれるのは無理な話だし,金銭的にも学生では10分の1も味わえないことがわかった.そこで,禁酒法の影響でディストラリーが極端に減少したバーボンに宗旨替えをした.

それでも時々は思い出したようにモルトウイスキーを飲む.機内で出されるスコッチがグレンフィディックだったりするとうれしくなったりする.アイレイモルトなんかは,飲むTPOが限られてくるが,ハイランドモルトの場合は,どこでも気軽に安心して注文できる.リベットは堅苦しいし,マッカランだと偉そうと思ってしまう.それに比べてフィディックは幼馴染にみたいにほっとする酒だったりする.

昔,ボーナスだ出たときに21年ものを買うかどうか迷ったことがある.これはウエッジウッドの陶器に入っているものだ.幼馴染の長男に無理して挨拶しておこうかなって感じだった.そうこうしているうちに50年とかいうわけのわからんビンテージを出した.幼馴染の兄達はとんでもなく高いところに行ってしまった.


日高見ー中取りー

石巻の酒である.宮城にはうまい酒が多い.秋田や新潟は,大酒造メーカーがあり安い酒はそれなりだったりする.なんてことを新潟県民の前で言ったら思いっきり反論を食らうだろうな.冷静に考えるとそんなこともない.これは宮城県に住む人間の贔屓である.けど,菊水のような大工場はねえ.

矛盾するようだが,酒造の近代化は否定しないし,価格が酒の味を決めるとも思わない.しかし,うまい酒は概して高い.その中でコストパフォーマンスが良いのが日高見だ.酔に通っていると,昔は蔵王だとか澤の泉とかを良く勧められた.これが金賞受賞とかで高いやつばかり.たまらん.

M2の時だったと思うが,手元に2千円しかなくて親方に何でもいいから2千円で飲ましてくれと頼んだことがあった.親方はいやな顔をして,日高見を飲ましてくれた.当時のメニューでは下から数えた方が早いくらい安かった.が,とても飲みやすく感動したのを覚えている.特に吟醸香が抑えられたすっきりしたところが気にいった.この酒のコストパフォーマンスの良さを皆に言いふらしたが,マイナーということで相手にしてもらえなかった.

そうこうしているうちに,やはりというか当然というか,日高見は県内で知られた酒になった.幾つかのブランドを出し,その中でも中取りは,かなりキテイル酒だと思う.あほなあいつは,中○しとか言って笑わせていたが,この間俺が間違えていっちゃったよ.どうしてくれるんだぁ!

宮城の酒は良い.全国区でなくて,かといってプレミアムってわけじゃない.浦霞や一の蔵もいいけど,マイナーな酒もええですよ.


チューハイ

酒の通とか言う人は,チェーン系居酒屋で出すチューーー酎を極端に嫌う.曰く「あれは酒ではない! ジューーースだ!」と.僕はそうは思わない.あれも立派なカクテルだ! 戸塚君は非常に挑戦的だ.いつも変わったチューーーハイを頼む.チョコバナナとか,ミルクオレンジとか.およそ酒の範疇ではないのでは....と思ってもしまう.矛盾している.

大抵は,大五郎や純といった甲類にジュースをまぜたものが出てくる.そんな中で関心したのが,白木屋(だったか?)でだすグレープフルーツをフレッシュで割る酎ハイである.というよりあれば酎ハイではなく,酎グレープフルーツだ.酎ハイのハイは,おそらくハイボールのハイからきているのだろうから,炭酸が入っていていて初めてハイであると言える.

くたびれているときは,チュウハイも良い.大抵は,チュウライムかチュウレモンが多い.ミルクとかカカオが入ったどろっとしたのは,よほどなことが無い限り飲まない.梅干をお湯割でぐちゃぐちゃにして飲むのもいい.変わったところでは,ほうじ茶や昆布茶でわるところもある.九州では,ロクヨンは,焼酎が6でお湯が4の割合だと河村先生に教わった.だけど,河村先生は,グラスが半分になると焼酎だけをついでいたから,ロクヨンは初めだけだった.

有楽町あたりのガード下で,焼きすぎた鳥と一緒にチュウハイを飲む.隣のサラリーマンに混じって,社会の愚痴を言ってみたりする.これが結構楽しかったりする.


ジャックダニエル

知らなかった.販売数量最大はずーっとジムビームと思っていた.1998年,ジャックダニエルがトップの座についた.これは,びっくりだ.テネシーウイスキーがアメリカの魂(おおげさ?)バーボンを凌駕したのだから.ジャックダニエルは,バーボンでなくテネシーウイスキーだから,当然ケンタッキー州でなくテネシー州にある.

ジャックダニエルの特徴は,サトウカエデの炭でろ過するメローイングという作業だ.このことが特徴としてよく記述されている.しかし,特筆すべきは,シングルバレルというブランドで,他の樽と混ぜることなくボトリングされたものを販売していることだ.原酒に自信がなければこうはいかない.

僕が口にするのは,残念ながらというか当然というかブラックラベルのものだ.それでも,ハイランドモルトに似たまろやかな味わいは,安心を与えてくれる.それにろ過によって不純なものが取り除かれていると思うからなおさら安心だ.だけど,僕の周りで好んでジャックを飲む人は見ない.それは,バーボンでないからなのか,それともシャープさが足りない味だからだろうか?

創設者のジャックダニエルは,「リトルジャック」と呼ばれ皆の尊敬を集めた.彼は身長が150cmしかなかったそうだ.僕も身長は高くない.でかい欧米人と話なんかするとき,このリトルジャックを思い出す.小さくてもやれるんだぜ!