二日酔は二日良い

酒の味を覚える前に二日酔いを覚えた.タイに行って最初に覚えた英語は,hung overだった.合宿所のコンパの次の日は地獄だ.本当の二日酔いで,午前中まで酔いが続き,あの独特のむかつきと意識が自分の外にある状態が午後一杯続く.よく死ななかったもんだと関心する.先輩もよく知っていて,吐き出すと水を飲ませてはかせることを繰り返したり,横に寝かせたりする.それでも二日酔いはまる二日続く.

4年のとき,学科対抗野球の決勝で負けた夜,4時?位まで飲んでいた.JJという当時行きつけのスナックのマスターがその時間まで空けていてくれた.どうやって家に帰ったか覚えていないが,長尾さんはやたらと飲んで,金曜まで学校を休んだことがあった.本人曰く「4日酔い」.飲みすぎで職場を4日も休んだら問題だと思うのだけど,ボスの澤本先生は笑って許していた.(本当に許していたかどうかは不明)

二日酔いはしんどい.伊集院や椎名を読むと二日酔いのことがしばしば出てくる.興味深いのは,その解決方法が多様なことだ.暑い風呂に入る,吐くまで水を飲む,泳ぐ,歩く,歌うなど皆色々やっているが,最も有効なのは,「迎え酒」らしい.酔った状態に戻すわけだが,僕は試したことがない.僕が良く試すのは味噌汁を飲むことだけど,それほど効果は無い.普通はよくしたもので昼過ぎには結構直る.そして夕方から絶好調になる.なんで?

世界でもっともコンパイルされたプログラムが,"hello, world"なら,最も破られた誓いが,「もう酒やめた」じゃないかな? 



スピリタス

世界最強の酒だ.いや,酒じゃない.これはアルコールだよ.90度以上の酒なんて味があるのか? カクテル用だというが,これで使ったカクテルってゾンビ以外に聞いたことがない.これを一気した後輩がいる.上山と神保だ.すっごいキック力で,あっという間にあっちの世界へ行った.

おそろしい酒だ.ロンリコやレモンハートに70度の酒がある.これもすごい.でも,言われればなんとなく香と味がある.これを使ったカクテルも良く聞く.50度位になると味も香もしっかりしてくるし,よくわかる.ここら辺なら焼酎や泡盛でもあるし,ウイスキーにもある.僕の味覚ではここら辺が味わえる限界だ.

なんで酒を飲むのだろう? この問いに多くの人が答えを出している.哲学者,生物学者,医者,歴史学者,はては天文学者まで答えている.酒を飲む理由は,僕なりに答えを持っている.だけど純粋なアルコールを飲む理由はわからない,なんでスピリタスが存在するのだろうか? 工業用エチルアルコールを飲む理由なんてあるのだろうか? 不思議だ.きっと辛味と同じで繰り返されるうちにもっと刺激が欲しくなり,感覚が麻痺し多少のアルコール度では満足いかなくなるのだろう.

なにはともあれスピリタス.買ったはいいけど,どうやったら減るの??


山崎

サントリーの高級酒だ.昔,阪急沿線に住んでいて東向日から高槻まで習いごとに通っていた.するとサントリーの山崎蒸留所が見える.当時はまだ周辺は田舎で,山の中腹にある建物は良く目立っていた.その時サントリーがどういう会社かもしらなかった.ただ,阪急の駅の名前が大山崎なので,大会社と思っていて,その理解は後に正しいと知ることになる.世界の3大ウイスキーといって,スコッチ,バーボン,ジャンパニーズと書かれたものをよく見かける.本当か?と疑いたくなるが,消費量のことを言っているのだと勝手に理解している.実際,アイリッシュやカナディアンは海外で多くの銘柄を見ない.ジェイムソンは別格か?

日本のウイスキーを飲むのは,クラブだとかスナックに何かの際に行ったときにだけ.自分で買うこともほとんど無い.積極的に飲むことは無い.昔は違って,安いウイスキーが国産で,税金の関係上,外国産が高いので国産一辺倒だった.ということは,税金が安くなった今,僕の趣向は海外のあこがれっていうことになる.コンプレックスか? 普段,日本のために国産を買うべきとあちこち言っているから,大いなる矛盾だ.しかし,一昔なら国産のウイスキーはどこか...そう,変な辛口というか,飲みにくいというか,どれも似ているというか...僕の舌に合わないのも事実だった.

そんな中で,山崎はピュアモルトという看板を下げて登場し,僕が始めていける!と思ったウイスキーでもあった.その後、響,余市など本格ウイスキーを出し,日本のウイスキーにバリエーションが出始め,選べるようになった.しかし! その価格も本格的で,これならマークの方がずっといいとも思ったのも事実である.個人で買うときは,心で非国民だ!と思いながらバーボンを持ってレジに運ぶのであった.


シンガポールスリング

略してシンスリ.ほんまか?ロングの決定版と呼ぶ(私だけ).テキーラサンライズと並んでよく頼む甘系カクテルだ.フレッシュなレモンジュースを入れられたりするとうれしくなる.ソーダが少なめでジンが多いとなお良い.多くのレシピにはジン,レモンジュース,チェリーブランディ,ソーダとなっている.味もさることながら,色がなんとなく熱帯向けだ.

シンガポールスリングは,アジアの3ホテルの一つシンガポールのラッフルズホテルで生まれた.他の香港のペニンスラ,バンコクのオリエンタルは訪れたことがあるが(訪れただけ),ラッフルズだけは見たことがない.ラッフルズホテルは幾つかの伝説を持っていて,虎の話や第二次大戦の話など興味深い.サマセット・モームが4年も滞在したというが,一般人じゃとても長期滞在は無理だ.でかい収入があればラッフルズに滞在したいものだ.

ぐっと庶民的になって成田の全日空ホテルのバーでこれを飲んだ.ビール,トムコリンズに続いてシンスリを頼んだ.これを飲みながらバーマンと話をした.その時,彼が作っている酒が綺麗な赤色をしていた.
「それ何?」
「お客様が召し上がっているものですよ」
と! このときはむちゃくちゃ恥ずかしかった.そそくさと退出したのは言うまでもない.言い訳をすると,そこは,人気メニューに対応できるよう幾つかのレシピの元をリザーブしてあるのだ.つまり,ピッチャーの小さいのに,レモンジュースとチェリーブランディを混ぜたのが入っているのだ.もちろん,注文した酒の作る過程を見ていなかったのと,自分の酒の色をちゃんと見ていない私が悪い.

シンガポールスリングの思い出はこれが一番強烈.