2008年6月21日(土)09:00
岩手・宮城内陸地震の被災地で多発している「土砂ダム」について、岩手大の横山隆三特任教授(情報工学)が20日までに、周囲から水が流れ込む範囲を示した「集水域地図」を作成した。水のたまりやすさが視覚的に把握でき、決壊の危険性や緊急工事の優先度を判定するのに活用できる。地図などを基に東北大大学院環境科学研究科の風間聡准教授(水工学)が分析した結果、沢沿いに急斜面が迫る土砂ダムほど高い危険度が推定されることも分かった。
国交省によると、土砂崩れで河川がせき止められた土砂ダムは20日現在、宮城県で迫川、二迫川、三迫川の各水系に計10カ所、岩手県で磐井川水系に5カ所が確認されている。
横山特任教授は、標高などが分かる国土地理院の50メートル間隔の数値地図を使用。水系と分水嶺(れい)を入力し、土砂ダムに水が集まる地域(集水域)を割り出した。面積もコンピューターで算定した。図の赤い線が分水嶺を示し、線で囲まれたエリアが集水域を表す。岩手側で5つ、宮城側では12の集水域が確認された。
集水域の面積が最も広いのは、一関市厳美町の小河原地区115.6平方キロ。次いで栗原市花山の坂下地区が76.4平方キロ、同市花山小川原地区の71.9平方キロとなっている。
風間准教授によると、どの土砂ダムに水がたまりやすいかは、集水域の面積で判断できる。面積が大きいほど流れ込む水の量も多く、標高の高い地点では、雨の量も増えるという。
風間准教授は斜度図と照合して地形との関係も調べ、(1)小河原地区は面積は広いが、傾斜は緩やか(2)坂下、小川原両地区は沢沿いに急斜面が迫っているため危険度が高い―などと分析した。
風間准教授は「流路の幅が狭いと流れが速く、土砂を削りやすい。土砂ダムが決壊した場合、土石流が発生し、下流域に被害を及ぼす恐れがある」と指摘。水位が上がる前に、傾斜が急な地点を優先して対策を急ぐよう強調している。
横山特任教授は「衛星画像や斜度図と併用すれば、土砂ダムの現状が把握できる」と話し、地図を両県に提供した。