東北大学大学院工学研究科 土木工学専攻 *
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水環境システム学研究室

・教授 風間 聡  ・准教授 小森大輔  ・助教 峠 嘉哉 
・技術職員 会田俊介  ・事務補佐員 角張ちあき  ・事務補佐員 杉本さと美 

研究室ページ


研究内容

 本研究室では,刻々と変化する地球環境,現在も未明である地球上で生ずる物理的な現象の定量化および将来的に発展する社会情勢に対しての自然現象の影響性を「水環境システム」という観点より研究しています. 主たる研究目的は以下の通りです.

  1. 降水,蒸発散,流出,貯留という現象を基本要素にして成立する自然環境における水循環の解明
  2. 水循環過程の総合化を反映した水環境および水資源の定量化
  3. 水環境に関連する生態系や自然現象の評価

水環境の循環系 水環境の循環系

1.陸域における水循環

 人工衛星のデータ,国土数値情報,降水観測のデータなどを使って,陸域の広域的な水循環を評価してます.この現象の因果関係は,気象,地形,地覆の条件が互いに影響しあう複雑なシステムとなっており,それぞれの 過程や相互関係を調べていくことにより,システム全体を明らかにしようとするものであります.さらに小項目に分けると次のようになっています.

  1. 降雨や降雪分布の評価 ( 積雪シミュレーション
  2. 融雪の評価
  3. 蒸発散量の評価
  4. 地下貯留量の評価
  5. 流出予測 ( 名取川の水動態シミュレーション

2.途上国の問題

 世界には日本と異なる水循環システムがあり,ユニークな現象が数多くあります.これらの現象の解明を通じて途上国の水資源問題の解決に貢献しています.例えば,メコン河の洪水氾濫は被害だけでなく,灌漑水や水産資源,栄養塩など様々なめぐみを与えてくれます.これらを総合的に解析して,将来の発展計画を立案します.また,ボリビア国では氷河の減少が顕著で,将来の水資源不足が懸念されています.こうした問題に対して,リモートセンシングとシミュレーションを用いて解析した結果を数値地図にして,当該国に利用されています.

  1. メコン河氾濫の研究
  2. タイ国の土砂災害研究
  3. ジャカルタの都市洪水対策  
  4. スリランカの水紛争研究

メコン河氾濫域 メコン河の氾濫.生活域.(カンボジア)

3.気候変動の問題

 温暖化に代表されるような気候変動は,水循環に様々な影響をもたらします.日本では豪雨の頻度が増し,洪水や土砂災害のリスクが高まるとされています.気候変動に備えた適応策を考えることが,社会基盤整備に欠かせません.将来気候モデルの結果を利用して,将来の洪水リスクや土砂災害リスクを評価しています.その経済評価から地域に応じた災害適応策の提案をしています.  気候変動は都市化も含めて途上国では深刻な問題となっています.前述した途上国の問題の中にも気候変動問題が含まれています.タイ山岳域の土砂災害は,新たな道路建設と豪雨の増加によって頻発しています.このリスクを求めると同時に適応策の提示を行っています.

  1. 洪水被害リスクマップの開発
  2. 積雪水資源減少評価
  3. ジャカルタの洪水適応策
  4. タイの水資源評価

タイ斜面災害現場 タイ北部斜面災害現場

4.生態と水環境

生物は流域環境,河川環境に影響を受けます.豊かな自然の象徴と言われた生物が環境の変化によって失われています.これを,リモートセンシング,水動態シミュレーション,現地観測を通して定量的に評価し,現地生物に適した水環境の再生,創造に取り組んでいます.また,植生は水資源や雪に影響を受けるとともに影響も与えます.この相互作用を解明することにより,より適切な森林と水資源,生態系の関係を示すことを目指しています.そのための水環境の指標化や生物生息域の予測や評価を行っています.新しい水環境研究といえます。

  1. 水生動物,水生昆虫生息域の評価
  2. 河川構造物と水生昆虫の多様性の関係
  3. 流域の生物多様性と遺伝子多様性評価
  4. 植生水質浄化

名取川流域の蛍生息ポテンシャル 名取川流域のホタル生息ポテンシャル図
(赤いほど生息可能性が高い)

5.基礎研究

今まで述べてきた応用研究に利用することを主な目的に以下の基礎研究を行っています.

  1. 流出モデルの改良
  2. 新しい積雪観測アルゴリズムの開発
  3. 川の認知の評価
  4. フラックス観測
  5. 乱流の統計解析

GPS積雪観測 GPSとスノーボードによる積雪深観測(楽しい)


卒業論文タイトル (過去三年間)

2015
適応策推定のための洪水・高潮複合災害被害額(秋間将宏)
氾濫原における純一次生産量と開発の関係(平賀優介)
分布型流出モデルを用いた名取川水系の付着藻類量推定(渡邊健吾)
2016
DAD解析を用いた確率降雨と確率洪水流量の関係(菅原雄太)
日本全国の流木流出量の評価(助川友斗)
大都市における内水氾濫頻発区域の分布とその特性(中口幸太)
2017
Instagramデータを用いた形態素解析による河川利用評価(安西聡)
不均一地表面における熱・水・CO2フラックスの動態解析(近将史)
植生が接地境界層内のCO2フラックスに及ぼす影響(坂井七海)
洪水・高潮複合災害の被害額推定及び適応策の検討(田中裕夏子)



修士論文タイトル (過去三年間)

2015
気候変動によるタイ国斜面崩壊影響評価(井上尚達)
2016
社会科学的分析とソーシャルメディア分析による河川関心度の評価(川守田智)
砂防堰堤のスリット化に伴う底生動物群集の時系列変化(林達也)
分布型流出モデルを用いた流量推定と気象要素の影響評価(高雷)
地形情報と流動モデルを用いた氷河後退の解析(吉澤一樹)
乱流フラックスの不確実性の定量化によるデータ品質評価(小山峻平)(環境科学)
2017
気候変動下の複合水災害リスク解析(秋間将宏)
流域内の積雪貯留量と地下水貯留量の相互影響評価(齋藤優人)
熱帯モンスーン域における氾濫源開発が流域環境に与える影響評価(平賀優介)
環境DNAを用いた水生無脊椎動物の広域分布推定(内田典子)
分布型栄養塩流出モデルを用いた名取川水系の付着藻類量時空間推定(渡邊健吾)
カンボジアメコン河流域における地表水中ヒ素濃度推定モデルの構築とその影響評価(佐藤郁)(環境科学)
Proposing the flood risk index in view of forest and climate change(Pharakonkham Sengphrachanh)(環境科学)



博士論文タイトル (過去三年間)

2014
熱帯モンスーン域における表層崩壊ハザード評価とその将来展望 (小野桂介)
Assessment of climate change impact on regional and seasonal water resources in Sri Lanka (Samarasuriya Patabendige Chaminda)(環境科学)
2015
An Integrated Study of Water Resources and Climate Change Impacts in the Upper Chao Phraya River Basin in Thailand(Pratoomchai Weerayuth)
2016
メコン河下流域における農業生産性と洪水氾濫の関係(天野文子)

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